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エンジニアラボ 第8回テックヒルズ Games on the Cloud! ~ゲームシステムをクラウドで~ 今年4月に開催された、次世代技術の可能性を追求する技術勉強会「テックヒルズ」の第8回目のテーマは「ゲーム×クラウド」。世界展開を視野に短期間にユーザー数を急拡大させるモバイルゲーム業界にとって、最新クラウド技術はどのようなメリットをもたらすのか?世界的クラウドサービスを提供する企業のプレゼンを通して、その内容を紹介したい。

クラウドはモバイルゲーム業界の救世主になりうるか?

この数年でソーシャルゲームを中心に急速な発展を見せているモバイルゲーム業界。日本でも大手~ベンチャーまで様々なSAP企業が矢継ぎ早にゲームアプリを開発、全世界に向けて配信している。
その中で大きな課題となるのが、世界展開を視野に入れたアプリ配信&インフラ運用だ。魅力的なゲームを全世界のユーザーに対して、快適・安心して楽しんでもらうためのインフラ環境をスピーディかつ低コストで構築することは、モバイルゲーム業界共通の課題であり、また早急に解決すべき問題。そこで、課題問題解決として"クラウド活用"は有効な選択肢となりつつあるという。
そこで今回「アマゾン」「グーグル」「IBM」「マイクロソフト」といったグローバルクラウドサービスを提供する企業による、各社サービスの強みや世界戦略の方向性、合わせてゲーム関連の事例が紹介された。

昨年だけで280もの新機能が開発・リリース。
「全部自分で作らない」AWS活用法

まずトップバッターとして登壇したのは、AWSでおなじみクラウドサービスの老舗企業・アマゾン。
アマゾン データ サービス ジャパン株式会社のエバンジェリストである堀内康弘氏の口から出てきたのは、2006年サービス開始から培われてきた豊富な実績に基づく、サービスの充実度だ。

「2006年、9つの機能でスタートしたAWSは2013年、280もの新機能が追加されさらに今年、すでに70の機能が開発・導入されているほどスピーディに進化しています」と力説。その上、価格に関しても提供スタート時に比べ平均5割前後下がり、例えば最新の「S3」での東京での価格は、1MB10円→3.3円程度にまで下がっているという。
それを踏まえた上で今回の本題として掲げられたのが「ゲームインフラと解析基盤そのものの考え方を変えるAWS」。
その解として堀内氏が挙げたのは「全部自分で作らない」というシンプルなものだ。

AWSはブロックを組み立てる感覚で、一つ一つのニーズにマッチした最適なインフラシステムの構築・運用ができるようにCPUからストレージ、DBを自由に選択し、また例えばディスクIO性能を1刻みで指定できる(100~4000の範囲内)といった高い自由度を誇る。その上、基本どこまでもスケールできるのでスタートアップ企業から数千万ユーザーを抱える企業まで、成長段階に合わせた理想のインフラをAWSによって実現できるのだ。
またサービスの質に関しても、「Amazon Redshift」と呼ばれる、ペタバイト級DWHによって低価格&容易にすべてのデータを効率的に分析できたり、大規模ストリーミングデータをリアルタイムで処理できる「Amazon Kinesis」などの高品質なサービスがいくつか紹介された。

現在、2万社以上の日本企業が利用し、ゲーム業界でも任天堂やセガ、グリーといった有名企業も活用。コスト削減やリードタイムの短縮、IDC運用から解放されることで開発が容易になるなど、よりゲーム開発本来の業務に集中できるメリットを享受しているという。
最後に堀内氏からは、AWSを積極的に活用してもらうことで、よりクリエイティブな領域にリソースを投資することが大きなメリットにつながるとの言葉で締められた。

世界中のDC拠点間10Gbpsを結ぶネットワークを
無料で利用できる衝撃とメリット

2013年、IBMが買収した「SoftLayer」によって、特に日本ユーザーにとってクラウドサービスの有力な選択肢が新たに増えた。

「現在、世界で13のDCを持ちさらに年度内に40か所に増やす」と話す、日本アイ・ビー・エム株式会社 クラウド・マイスターの安田智有氏の言葉から、IBMのクラウドサービスに対する"本気度"がうかがい知れる。
そのSoftLayerの特徴・強みはいくつかあるが、中でも特に他社と違う圧倒的なインパクトを持つ強みとして安田氏が力説したのは、「スピード&コスト」。例えばDC拠点間を10Gbpsで結ぶネットワークを無料で利用できる点や、最大4時間でどんな要望に対しても理想のインフラ環境を構築・提供できること。
実際の活用例として、「Intel Xeon 2690×2+64GB RAM+SSD 400GB+Cent OS」という組み合わせでも4時間以内で提供し、月額約11万円で20TB分が無料でついてくる等コスト的にもかなり挑戦している。
また万が一部品が壊れても2時間以内に交換できる点も大きい。

そしてもう一つ、他社にはない大きな特徴が仮想サーバーや専有仮想サーバーだけではなく、ベアメタル(物理サーバー)も選択できる点。特にレスポンスを重視するゲーム企業にとっては、手軽に利用できる仮想サーバーからパフォーマンス重視のレアメタルまで自由に選択・組み合わせできるのは、大きなメリットとして挙げられる。
実際、現在SoftLayerを利用するゲーム企業からも、こうした点に関して高い評価を得ているという。
さらに安全性に関しても、SoftLayerでは特にDDoS対策に注力しており、サーバーの立ち上げ時から常にプロテクション環境において監視する体制が確立されている。

"後発のMS"だからこそ低価格&オープンで
簡単な選択肢と柔軟性を提供できる

「私たちはクラウドサービスに関して後発であり、現在もアマゾンに必死で追いつこうとしている」
そう断言するのは、日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリストの砂金信一郎氏。
現状、アマゾンに比べて豊富なサービス等の点で劣っている点も認めつつ、その上で同社が提供するクラウドサービス「Windows Azure」のメリットについて語られた。

このWindows Azureは、MSのソフトウェアテクノロジーにオープンソースのパワーを結集した最新のクラウドサービス。世界24か所のデータセンターを運営しつつ、特に日本では最近、東京だけでなく大阪にも拠点を置いたことが注目を集めている。
他にもMSといえばこれまでの実績で築き上げた豊富な技術・資産をAzureに活用することによるメリットをもたらしているという。
例えば同社ゲーム事業「XBOXLIVE」では4800万サブスクライバーを支えたり、また自動販売機やカーナビ、医療機器などに組み込まれている無数のWindowsデバイスで得られたデータを収集、それをAzure上の機能として集約することで活用している。
また広く利用される表計算ソフトと言えば「Excel」。実はこの機能を使うだけで、リアルタイムでゲームユーザーの利用状況や年齢や性別などの傾向を誰もが簡単に分析できるのも、大きなメリットだ。

また会場では実際にAzureを活用したインフラ構築を行っている、株式会社GIRLANDEの廣瀬一海氏も登壇。「クラウドの中にLAN(L2ネットワーク)」を作れる機能があることや、PaaS(仮想マシン展開が有利)とIaaS(ディスク永続化が可能)を同一サブネットにまとめることができるメリットなどについて、具体的事例をもとに説明がなされた。

グーグル、そしてCROOZもゲーム×クラウドの
先進事例を紹介

また今回、グーグルも「Googleスケールで実現するゲーム世界」というテーマで、クラウド事例を紹介。
そして最後に登壇したのは、テックヒルズを主催するCROOZの田沢知志氏。創業メンバーの一人であり、TeamZeusディレクターとして主にインフラ関連の設計・運用・管理を担っている。
今回のテーマは「クラウドベース世界配信ゲームの理想と現実」。

積極的にクラウドを活用している同社では、「Cache/DBのレスポンス遅延」「ローカルポート不足」といったキャパシティの問題に直面してきたという。
さらにコストを考慮した上で、そうした問題を解決するために例えばDBをスケールするために臨機応変にパーティショニングやシャーディング対応、また参照はできる限りキャッシュにといった方法を採用。
またキャッシュのスケールに関してはストレージ保存を避けたり、保存用スタンバイインスタンスを用意するなどの方法によって対処しているという。

その上でクラウドを活用する魅力について、田沢氏は「CPU,メモリ、SSDストレージ、PaaS機能などが日々進化し、続々と新しいクラウドデザインパターンの可能性が生まれている」と指摘。だからこそ、まずはクラウド環境を自分の手で使ってみることが重要だと力説していた。

想像以上にクラウド環境は世界中のゲーム開発を支えている。
日々進化するクラウドを活用するメリットは今後、さらに拡大

今回も大盛況のうちに閉幕したテックヒルズ。各社最新のクラウドサービスの内容や、ゲーム開発上のメリットが数多く紹介された。
特に数年前では考えられないような低価格で、かつ容易にDBやストレージなどをスケールできること、さらに世界中のDC間ネットワークをフル活用できる環境が急速に整備されているなど、クラウド技術・環境の真価が著しいスピードで進化していることは今回、新たな発見だった。
そして既に多くの名だたるゲーム開発企業が積極的にクラウドを活用して、大きな効果をもたらしているという現実を目の当たりにすることで、今後のクラウド技術の進化はインフラ技術者だけでなく、ゲーム開発者にとってもぜひチェックしてもらいたい。

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