番外編!エンジニア列伝 トラック運転手が、スマホエンジニアへ!? ------ 現在急成長するスマホ業界で技術の先行者として俺は波に乗る! ------
第7回:某大手コンテンツ配信企業 マネジャー:山崎ドリー氏(仮名)
iPhoneが日本で発売されてから3年目となる2011年、携帯キャリア各社からはAndroidを搭載したスマートフォンが大量に市場投入された。急速な勢いで端末が普及するに伴い、アプリ開発やサービス開発といった面も盛り上がっている。この盛り上がりにいち早く転職で飛び込んだのが、ドリー氏だ。今現場で求められているスキルや、やりがいについて聞いた。
(インタビュー 袖山 亜希子 構成/撮影 増田 千穂 )
※今回スマホ業界で働くエンジニアの本音を語ってもらう為、企業名氏名共に伏せさせていただきました。
実は元トラックの運転手という経歴を持つドリー氏、ドライバーの使用するシステムを自ら制作したことをきっかけにIT業界へ転身を果たした。その後、受注開発を主体とするSIerのエンジニアから、スマートフォン業界へと転職。下請けの立場から、エンドユーザーと直接向かい合う立場へと大きくステージ転換をしている。いち早く飛び込んだ業界の内側で、急成長の「勢い」を感じているようだ。
- 袖山
- スマートフォンが大変な勢いで普及して、スマートフォン関連の開発をするエンジニアというと今をときめく最先端というイメージなのですが、元々スマートフォンに興味があったのですか?
- ドリー氏
- 特にスマートフォンだけということはなかったですね。ただ、その時々でスポットのあたる技術をターゲットに「先行者」として波に乗って行きたいという考えはいつも持っていました。先行しておけば、後には当然「普及」という大きな波が来ます。これにしっかり乗れる立場にありたい、と意識して転職した結果スマートフォン関係の仕事に携わることになりました。
- 袖山
- スマートフォン関連は、まだまだ人材不足で新しい業界という感じもしますし、技術的にも新しいものが必要ですよね。以前は企業内の情報システム部門や、SIerでの開発などもされていたそうですが、転職時に不安はなかったですか?
- ドリー氏
- 情報システム部門というほどのものではなく、いわゆる「一人情シス」みたいな状態で、私は元々エンジニアではなくトラックの運転手をしていたんです。そこで使っていたシステムを自分達が使いやすいモノにカスタマイズしてみたのが最初でした。必要に迫られて「得意」を掘り下げて行った結果、今がある感じで。だから新しいことに取り組むことに全く抵抗はないんです。
- 袖山
- なるほど、やはり今すでに活躍されている方は積極的に新しいことに飛び込むタイプなのですね。一足先に業界で活躍されている方から見て、業界の盛り上がりは感じますか?
- ドリー氏
- もちろん、非常に盛り上がっています。特にAndroid携帯が急速に普及したことで、それまであったスマホといえばiPhone、みたいなイメージも崩れましたよね。ハードウェア、アプリ、コンテンツ、そしてシステムインフラとさまざまなプレイヤーが入り乱れて、みんなが未来に向かって走っているような高揚感があります。
- 袖山
- まるでお祭りに参加しているような感じですか?(笑) エンジニアはもちろん、企業側でも今はスマートフォンの時代だからとにかく関わらないと、というような勢いがありますよね。
- ドリー氏
- でも、あまり儲からないという話もあるんですよ。たとえば受託開発なら開発するだけでお金が入ってきたけれど、アプリを自社開発しているとアプリ本体の売上が頼りですよね。小さな企業でもベンダーとして参加できる業界ではありますが、それでしっかり儲けるというのはなかなか......。
特に、この盛り上がりを見て後からアプリ業界に入ってくるところは、かなり出遅れ感がありますよね。もう難しいかも、なんていう話も聞きます。でも何が売れるかまだ定かではない状態ですから、一発逆転とか空前の大ヒットの可能性だってありますよ。

某大手コンテンツ配信企業
マネジャー:山崎ドリー氏(仮名)
すでにスマートフォン業界で活躍しているドリー氏から見て、業界の人材への要求はそれほど高くないという。最先端の業界は、意外にも新たな参加者を幅広く受け入れる懐を持っているようだ。
- 袖山
- 今元気な業界であることは確かですし、スマートフォン業界への転職を目指すエンジニアも数多くいます。そういう人たちは、どういうスキルを身につけるべきでしょうか。
- ドリー氏
- 特別なスキルは必要ないと思います。ただ、Web関連の経験やスキルは重宝されるでしょうね。スマートフォンとWebは密接な関わりがありますから。Web系といっても、特にインフラよりの技術や、いわゆる「Webシステム系」の経験が活きると思います。サービスのスタートアップ時にはどうしてもインフラ系も見られないとダメですから。これにプラスして、スマホアプリも作れますという経験があれば尚いいですね。アプリは業務でやったことがなくても、自分である程度作った経験があればOKなんじゃないかな。転職を考えているなら、ちょっと作ってみるといいと思いますよ。開発環境はすごく進んでいてカジュアルです。特にAndroid向けアプリは取り組みやすいと思います。

一見ハードルが高そうなアプリ開発。
実は意外と取り組みやすい?
- 袖山
- 意外にも、ハードルが低そうですね。
- ドリー氏
- 実は、現状では求められているスキルはそれほど高くないですね。仕事をしている仲間にも結構、え?この程度で?みたいな人がいたりもしますよ(笑)。
- 袖山
- では、人物像といいますか、性格的なものはどうでしょう?
- ドリー氏
- それも特に難しいことはないですね。求められているなと感じるのは、提案力と解決力です。技術とやりたいことの間、「つなぎ」の部分が大切なんですよね。私自身は、ビジネスセンスが弱いのでここが課題だなと感じています。会社によって結構ビジネススタイルが異なるので、転職の時にはそういう部分を気にしてもいいかもしれません。
- 袖山
- 確かに、ガツガツ系の会社もあれば、まったり系もありますよね。他業界にくらべてスマートフォン業界がいいと思うところはありますか?
- ドリー氏
- やろうと思えば、自分1人で全部を作ることが可能なのはいいと思います。プロジェクト規模も小さめなので、自分ができる範囲も広いですしね。自分が出したアイデアが活かされたり、自分が開発したものの最終的な形や使われている様子が見えるのはいいですね。
SIerにいると、ここは自分でやったんだという自慢はしにくいですよね。スマートフォンアプリなら、このアプリは、このサービスは自分が作ったんだと言うことができます。個人の実績が作りやすいということです。
人によっては、スマートフォンは儲からない、もう新規参入はうまみがないと言う。しかしドリー氏には悲観的な見解はない。スマートフォン業界は今後盛り上がりが続くのはもちろん、先々につながる技術とキャリアにも期待できる場のようだ。
- 袖山
- 今後のお話も聞かせてください。まず、ご自身について。5年後は何をしていると思われますか?
- ドリー氏
- サービスを開発してマルチデバイスに展開する、という大枠は変わらないと思います。展開する対象が何になるのかというのがポイントですよね。
漠然と、パソコンでWebを見るということはなくなるんじゃないかなと感じています。それでもHTMLやFlashといったWeb周りのものをデバイスで利用するという形は変わらないでしょうね。だから、私としては常に新しいものにアンテナを向けつつ、最新のものに対応できるようにはしていきたいです。 - 袖山
- やはり先取りなのですね。では、スマートフォンの今後というのはいかがでしょうか。

スマートフォン業界の将来を語るドリー氏
- ドリー氏
- まず、今はスマートフォンといってもいろいろな規格がありますよね。短期的にはムリでしょうが、いずれはデバイス側でも統一されるのではないかと感じています。開発側からすると、もっとやりやすい時代が来るんじゃないかな。ビジネスという面では、アプリのピークはすぎてサービスで勝負の時代が来ていると思います。
- 袖山
- なるほど。今後ますますやりがいのある業界になりそうですね。
- ドリー氏
- スマートフォンエンジニアとひとくちに言っても、やることは幅広くあります。アプリを開発するだけがエンジニアではありません。作る物は小さいのに作業は山盛り、という感じでもありますが、その分作ったものを自分の成果として見せられるのはいいところです。やりがいもとてもありますよ。
- 袖山
- 今後、成長していく業界の中にいるというのはエキサイティングですよね。本日はありがとうございました。
●プロフィール
山崎 ドリー(やまざき どりー)【仮名】
元はトラック運転手として働いていたが、PCやITが好きで趣味にしていたこともあり技術をかわれて社内のIT担当へ、その後自然とエンジニアに転身。
SIerの下請けで活躍後、スマートフォンを活用したシステムの提案をクライアントに行ったことをきっかけに、スマートフォンの世界へ。
最近、某 大手インターネットコンテンツ企業に転職し、現在はプラットフォーム周りを担当している。
- お気に入り技術:
- クラウド。今後はWindows 8やLionなどOSにも注目したい
- 座右の銘:
- 常に先駆者たれ!
急拡大しているため、人材は全体的に不足している。Webシステムの経験があれば働くのには困らなそうだ。多くの企業が自社アプリの提供や社内業務へのスマートフォン活用にも熱心であるため、小さなソフトハウスでもきっかけがあれば大企業と直接仕事ができる可能性もある。黎明期だけに、取り組みがいのある業界だ。
企業に所属して作っても、比較的明確に自分が作ったものとして個人実績になるのが、スマートフォンアプリだ。規模がコンパクトなだけに、自分のアイデアや技術を盛り込む機会が多い。また、個人で開発したものを公開するのも比較的簡単だから、技術をアピールしたいエンジニアはどんどん取り組んでみて欲しい分野だ。
ある試算では、2011年末までにAndroidが1500万台に届くという。各キャリアから発表される新モデルにもAndroid携帯の占める割合がかなり多い。首都圏や若年層を中心に、ますますAndroid携帯を持つ人が増えるのは確実だろう。FeliCaやワンセグなど日本独自の機能を盛り込んだ「ガラスマ」が流行した結果、数年後にはまたガラパゴスな状態が到来する可能性もあるが、その時もベースとなるのはAndroidなど現在のスマートフォンの延長上にある技術だと考えられる。





