ホーム > 特集一覧 > エンジニア列伝 > vol.8 フリーエンジニア対談 上木氏 たばったー氏

エンジニア列伝 実情は「ひきこもり中年」!? 好きではじめたわけでもないのですが、僕たち、フリーエンジニアです!第9回フリーエンジニア対談 上木 氏 たばったー氏

技術さえあれば、家でも出先でもPCに向かって仕事ができてしまう。まさしく「腕一本で食べていけるスペシャリスト」というイメージのフリーエンジニアだが、その実態はどうなのだろうか。フリーエンジニアに向いているのはどんな人なのか、フリーエンジニアとして成功するというのはどういうことなのか、現役のフリーエンジニアである上木さんとたばったーに聞いた。

(インタビュー 久利 可奈恵 構成/撮影 増田 千穂 )

フリーエンジニア生活に至った理由は、会社都合?自己都合?

現在はフリーで活動しているが、以前は大手企業で開発も担当していた、というのが上木氏とたばったー氏の共通項。そして2人とも、近々法人を立ち上げようとしている。自分がきちんと食べていけるだけの稼ぎがあるのはもちろん、将来的なビジョンも持つ、エネルギーあふれるフリーエンジニアだ。

久利

新年度には法人を設立する予定の上木氏、
これまでの研究成果を世に出したいと意欲を語ってくれた

とりあえず、今日は気軽な感じで行きたいので、まずはビールをどうぞ~!
上木
残念ですが、今年度中は禁酒なんです。今年はあまり稼ぎがよくなかったので、セルフペナルティですね。でも新年度には法人を設立するので、その時は解禁。飲まないわけには行かないでしょう(笑)。
たばったー
僕はいただきます!ちなみに法人ってどんな会社を作るんですか?
上木
私はデジタルカメラ黎明期に開発に関わってきたんですが、プライベートでもずっと研究を続けてきて、その研究成果を世に出す会社です。
きっかけは、ツーリングで全国を回ってた時のことです。奄美大島のホノホシ海岸という、打楽器で民族音楽を演奏しているような音が聞こえる海岸に出会ったんですが、このすばらしさを伝えたいと思ったけれど、写真じゃ音まで伝わらない。当時はガラケーを使っていたので、ムービーも低画質でよくわからない。なにか静止画でこの感動を伝えられるものがないかな、という想いで研究を続けていました。
久利
おもしろそうですね。どういうものになるんだろう? ローンチしたら教えて下さいね。たばったーさんは法人にはしないんですか?
たばったー
実は僕も考えてました。基本的に節税や顧客の拡大ですね。ただ、今はフリーの仕事で手一杯です。
久利
たばったーさんは昔からSNSとかウェブ関係での活動が盛んですよね。確かSNSのはしりの頃から、いろいろやっていましたよね。
たばったー
そうですね。元々インフラ系の会社にいたり、常にウェブ系には興味がありました。PHPは大好きだし、今はWordPressに注目しています。
SNS系では前職からOpenPNEのプロジェクトに関わっていましたし、早稲田大学の学生でつくるSNSも運営していました。ソネットがOpenPNEを利用して提供していたサービスにも関わっていますし、僕はずっとこの方向ですね。
久利
一方で上木さんは新人教育をやったり、ベンチャーの役員をやったり、これまでの会社でいろいろなポジションを経験されてますよね。これはどうしてなんですか?
上木
あ、それはアルバイトです(笑)。やりたいことをやるだけでは食べて行けないので、お金がなくなったら知り合いの会社でちょっと働くという感じで。そちらでいくらお金が入ったとしても、アルバイトはアルバイト。本業にはしません。とは言え、年齢と賃金上の問題もあるので、社会的には部長や役員として企業に所属していますが、自身の研究は片時も忘れたことは無いですね。
久利
それはおもしろいですね。では、上木さんはやりたいことをやるためにフリーになったという感じですか?
上木
そうともいえますけど、会社員ができないだけかも...(笑)。
人当たりが良いと周りには言われるんですけど、仕事や経営となるとダメなんですよね。役員や社長に、こんな目先の利益ばっかり考えたやり方では先は無い!ばっかじゃねえの!なんて言ってしまったり(笑)結局ワガママなんですよね。
たばったー
すごいですね(笑)。僕は完全に、フリーになるしかないからなったという状態です。元の勤め先はISP関係だったんですが、入社して5年くらいで経営が傾いてしまって、エンジニアとしての仕事が無くなってしまったんです。マンションのデベロッパーもやっていた会社なので、そっちの部署へ行くか辞めるかしてくれ、と言われたんですよ。
久利
えええ! それは要するに現場の仕事をするか辞めろという究極の選択!?
たばったー
いえいえ、本当に会社としてはそれしか選択肢がなかったんですよ。ただ上司が、君の将来を考えればどこかでエンジニアをやるべきだと思う、と言ってくれて。それでフリーになったという感じですね。
久利
なるほど!いい上司だったんですね!それはよかったです。では2人とも、そもそもフリーでやっていくぞ、というような決意はなかった?
上木
ないですね。私はきちんと勤めつづけられる人はすごいと思うし、うらやましいとも思いますよ。私なんて本業は「ひきこもり中年」だと思ってますから(笑)。
たばったー
あ、僕も! 僕も「ひきこもり中年」ですよ(笑)。フリーになる決意なんてしたことありません。

フリーエンジニアは「すべての途中」

フリーエンジニアといえば、会社に所属しているよりも自由なイメージもあるが、全てを自分で管理しなければならないという問題もある。フリーエンジニアとして成功するとはどういうことなのだろうか。

久利
上木さんは仕事の上で、つい強く出てしまうという話をしていましたが、お客様に対してはどうなんですか? フリーだとそのへんも大変でしょう?
上木
こう見えてもお客さんの意向には従いますよ(笑) 過去に「業界で一番最初にこれをやりたい!」という勲章だけが欲しいクライアントがいて、技術的にも、クライアントのビジネスにとっても、ものすごくムダな事はわかっていたんですが、お客さまの要望をかなえるのも僕のミッションですから、十分無駄であることを説明した上で、それでもどうしてもとお客さまが望んだので、ちゃんと満足していただく形で飲みましたよ。
久利
やるじゃないですか!(笑)。たばったーさんは?

フリーエンジニアを選択したのは一つの手段、最終目的に向けての途中過程と語るたばったー氏

たばったー
そりゃあいろいろありますよ。他のメンバーのミスで僕がしかられたり。すごい機能をリリースしても、なぜかそこはスルーされたり(笑)、お客さんの言うことだから従うけど......ということはどうしたってありますよね。
久利
フリーだと結果を出して当たり前というのもあるのかもしれませんね。技術以外にもいろいろと必要になるフリーエンジニアですが、この道に向いている人と向いていない人というのはありますか?
たばったー
もし、自分は向いていますか?と聞く人がいるなら、それは向いていないです。そういうことを自分で決められない人は向いていないですね。
上木
確かにそれはあります。会社の中で言われた通りに開発するエンジニアになるだけなら、かなりの人がなれるんです。私は教育にもずいぶん携わりましたが最初にいくつか問題を出すだけで全く向いていない人はわかります。そういう人を除けば、勉強さえすればなれる。
ただ、フリーでやっていくというのはちょっと違いますよね。
久利
なるほど。人に決めてもらいたいような人がダメだというのは納得です。ではフリーエンジニアとして成功するというのはどういうタイプでしょう?
上木
まず成功の定義が難しいですよ。どうなったら成功なのかがわからない。たとえば私は法人を起こす予定ですが、起業して社長になってしまったら、もうフリーエンジニアではない、という人もいるでしょうし。金銭以外の点に満足を見いだせる人が向いてるでしょうね。
たばったー
フリーはどこから見ても中途半端というか、中間的な存在だと思います。「こうなったらフリーとして成功」ということはないですよ。受託開発を続けてもいいですが、ずっと委託先が見つかるとは限りません。いつかは自分でサービスを展開しないと。でも、そうしたらフリーではなくなってしまう。
上木
確かに受託でずっとというのは厳しいでしょうね。市場も冷めていますし、そもそも完全なフリーというのはかなり不利です。
たとえば同じ仕事をするにしても、法人でないと仕事を出さないという企業もあるし、法人に出すならば安心感があるから予算もたくさん出せるけれど、個人にはそこまで出せないという話もよくあります。幅を広げようと思ったら、結局法人化は避けられません。
たばったー
今は成果に対して報酬を払う時代ですから、やれて当たり前で評価もされづらいですし、フリーはなかなか厳しいですよ。
上木
確かにほめて伸ばしてもらえるということはないですよね。仕事が入ってくるのが評価という感じ。人を雇ってオフィスを構えると固定費がかかるけれど、フリーだとそれがないのはいいと思っています。
たばったー
ふみ倒されるというか、逃げられることもありますよね。実は僕、昨年100万円くらい逃げられた経験が......。
久利
えええ! 100万は大きいですね。そういうリスクも考えて対応しないとダメですよね。
上木
でも私は、フリーの自由さは気に入ってますよ。とにかく自由!ハイリスク、ハイリターン!!
たばったー
自由ですか......僕はあんまり好きじゃないんですよね。完全な手放しだとやりづらいからある程度枠は欲しいし、仕事中の話し相手だって少しは欲しい。性格的に向いてないのかな(笑)。

優秀な若手はライバル。でもしっかりライバルに育って欲しい

厳しい環境の中フリーエンジニアとして活動し続けている2人には、今のIT業界はどう見えているのだろうか。今注目のサービスは? 今後の業界の担い手は?

久利
最近お2人が作られたものってどんなものがありますか?
上木
私は今、受託ではiPhone向けのゲームを作ったり、Android向けアプリの案件をサポートしたりしています。
久利
それは開発部分だけの担当ですか? それとももっと深くまで?
上木
企画も当然やりますが、デザインやイラストレーターの手配、マネタイズなどもやりますよ。別に元から得意なわけではないんですが、やっぱり今はスマートフォン向けだなと思って、いろいろな企画の中でも一番覚えることが多そうなものを選びました。
久利
時にはお金よりも自分の身になるものを選ぶという考え方ですね。フリーでやり続けるには必要かもしれません。

フリーエンジニアはハイリスクハイリターン!?
過去の失敗談も飛び出しながらも談笑は続く

上木
後は、自社の立ち上げと自分のサービス展開ですね。皆さんにすごく楽しんでもらえるものになるはずですから、期待してください。AR系のサービスとかも考えていますよ。
久利
そうなんですね、実は私今、仮面ライダーのARにはまっています(笑)たばったーさんは最近どんな仕事をしているんですか?
たばったー
私は女性向けの情報サイトを担当しています。後はWordPressを使ってのSNS的なものの開発も多数手がけていますよ。
久利
そのへんはやっぱり得意分野ですよね。
たばったー
もちろん僕もスマートフォンには注目しています。今はスマートフォン、タブレット、ソーシャルゲームでしょう。その中でもプラットフォームを持つのが一番強いですよね。とにかく人を集める。人さえ集めればお金を産む方法は後からついてきます。
僕は、Facebookはもう新しいレイヤーで国家になると思っているんですよ。きっと新しい通貨とか出すでしょう?
久利
国家ですか! それはすごいなあ......。
上木
仕事のやり方も変わってきていますよね。私も開発で仕事をする時くらいしかPCを使わなくなりましたし。スマートフォンやタブレットをターゲットに新しい展開をするサービスが今後は伸びると思います。
たばったー
僕も賛成ですね。たとえばテレビや電子ブックとECサイトを連動させるというようなこともあっていいと思うんですよ。テレビは相当大手でないとムリでしょうけれど。
久利
あ、それ私が欲しいです。電子雑誌は増えているけれど、雑誌で見たものが直接買えないのはもどかしいですよね。外部のECサイトに飛ばされるばかりで。直接買えるようなものがどうして出ないのかなあと思っていました。技術的には可能ですよね?
上木
技術的にはとても簡単ですね。ただ、難しいのは権利です。大きい会社ほど権利関係は厳しくなって身動きが鈍くなるので、そういう意味では、小回りの効く個人の方が有利な切り口を見つけられるかもしれません。 今は個人でできることも増えていますから、チャレンジングなことは個人でもどんどんやった方がいいですね。ただ、そういう取り組みをする若手は正直少ないですが。
たばったー
少ないですよね。これは教育のせいだと思うんですよ。僕は中学や高校でプログラムの基礎教育をするべきだと思うんですよね。数学なんかより役立つと思いますよ。 就職してから初めて勉強するのではなくて、ごく基本的なことは学校で学んでおくべきです。
だって日本にはもうこれしかないんですよ。ハードの開発はもう世界で戦える状態ではないし、後はサービスとITしかない。もっと基礎教育をきちんとした方がいい。
上木
参考書とかで独学は厳しいですよね。何もわからない人が1ページ目から読めばできるというようには作られていない本が大半です。でも、そういう本を作ろうとは思っています。読んだら修行できるような。
久利
上木さんは執筆もかなりされますよね。その本はとても楽しみです。
上木
でも、私はエンジニアが増えるとライバルが増えるなあとも思うんですよね(笑)。
たばったー
確かに! 僕も若くて優秀な人は敵だと思っています(笑)。ひきこもり中年、がんばりましょうよ!!
久利
そのエネルギッシュな考え方で上を目指せるのが、フリーエンジニアとしてやり続けられる人の特徴なのかもしれませんね。今日はありがとうございました。

アイムファクトリー
代表取締役 久利 可奈恵

●プロフィール

上木さん

キャリア:
大手コンテンツ配信企業で技術開発部長を務めるなど、IT企業各社で人事や教育などにも携わる
→フリーエンジニアの傍ら自分の思いを乗せられる静止画像フォーマットの研究を開始
→2012年4月にはサービス会社を設立し、新サービスリリースに向けて活動を開始する予定。
お気に入り技術:
人工知能(特にゲームのAI)
座右の銘:
「知りたい時が調べ時」でしたが、同時に「簡単に得られた知識を自分の知識と思い上がるな」と自身を戒めてます(笑)
自分を動物にたとえると?:
思い当たりません。ひねくれてるので(笑)
休日の過ごし方は?:
料理、バイクでツーリング

●プロフィール

たばったー

キャリア:
新卒でISP系企業に入社、インフラ系エンジニアとして活躍する
→PHPやWordPressなどウェブ系技術に強く、SNSエンジンOpenPNEのオープンプロジェクトにも参加。ソーシャルに精通。
→現在は某コンテンツ配信企業にて女性向け情報サービスの開発に携わる。
著書:
OpenPNEオフィシャルガイドブック
OpenPNEカスタマイズによるSNSサイトの構築と運営―オープンソース徹底活用
お気に入り技術:
CMS(wordpress)  スマホ(iphone)、 タブレット( iphone)
座右の銘:
スティブジョブス
Find What You Love - 夢中になれるものを見つけなさい。
Stay hungry,Stay foolish. - ハングリー精神で、バカでありなさい。
自分を言語に例えると?:
PHP言語。柔軟で汎用性が高い。PHPで出来たwordpress最高!
休日の過ごし方は?:
スポーツジムに行くか自転車で都内をサイクリング

編集後記~取材を終えて~

フリーエンジニアとして活躍するお2人ながら、フリーとしてやっていこうという強い決意をしたことはない、というお話は印象的でした。何かサービスを生み出したい!という決意がないなら、言われたとおりに作る会社員がいいのでは、というのは2人共通の見解のようです。それでもお2人ともフリーエンジニアとして精力的に活動しているのも事実。安定よりもやりたいことを重視する人や、やりたくないことに力を入れず将来に向けて力をつけたいという人にはアリな選択なのでしょう。フリーで活動しているにもかかわらず、IT業界全体を見据えた後進の教育に話が及んだのも印象的でした。

ITエンジニア担当
久利 可奈恵

キャリア相談(無料)はこちらから

次回予告

2年間で100の新サービスを立ち上げる!
株式会社サイバーエージェントで新事業を牽引する前川 健一氏