近年、様々な業界でAIやビックデータの活用が進んでいることを受けて、データサイエンティストという職業を目指していたり、興味を持っていたりする人もいるのではないでしょうか。
しかし、巷(ちまた)ではデータサイエンティストという職業はAI技術の発展と共に将来的になくなってしまうのではないか?と危惧する意見も見られます。
本記事では、データサイエンティストを目指したい人や実際に業務でデータを扱う部署にいる人に向けて、データサイエンティストの将来性や10年後も求められる人材になるためのキャリアプランの立て方について解説します。
市場動向やニーズを正しく把握し、今後のキャリアプランにぜひ役立ててください。

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データサイエンティストの基本情報
データサイエンティストの主な役割は、企業や組織に集まってくる膨大なデータをビジネス課題や次のビジネスに活かすことです。
テクノロジーの発展に伴い、集まってくるデータ量が爆発的に増えており、プロフェッショナルでなければ扱えないようなレベルに到達しています。今や若者だけでなく、40代、50代、それ以上の年代でもスマホやパソコンを使うのが当たり前になってきました。
誰かがインターネットで検索した時やSNSに投稿する度に大量のデータが蓄積されていると考えれば、データの膨大さは想像できるのではないでしょうか。
また、AI画像解析機能や音声認識機能なども向上した今日においては、データの種類も多様になっており、使い道も幅広くなっています。このような情報爆発によって蓄積されるビックデータを使える道筋を見つけるのがデータサイエンティストの役割なのです。
以下では、もう少し具体的にデータサイエンティストの業務内容や類似ポジションとの違いについて解説をしていきます。
データサイエンティストとは?
データサイエンティストとはデータサイエンス力、データエンジニア力をベースにデータから価値を作り出し、ビジネス課題に対して答えを出すプロフェッショナルです。
言い換えると、企業や組織に集まってくる膨大なデータをAIの機械学習や統計学などを用いて分析し、ビジネス課題の解決に役立てる道筋を立てる仕事です。
具体的にはデータの収集・分析・加工、報告、業務への落とし込み作業です。単にデータを収集して処理するのではなく、使える知見を引き出し、企業や組織の意思決定に寄与するところまで携わります。
そのため、統計学に関する知識や分析ツールを使いこなす能力、ビジネス課題を解決する能力、データ分析で得られた知見を正しく人に伝える能力など求められるスキルも多岐に渡ります。
日本における”データサイエンティスト”
日本におけるデータサイエンティストの定義や位置付けについても触れておきます。
「データサイエンティスト」という言葉が流行している一方でこの言葉の定義が欠落しており、雇い主側の期待と雇われる側のスキルセットがマッチしないという問題が生じています。
これらを解決すべく、我が国ではデータサイエンティスト協会が発足しました。
この協会のスキル定義委員会ではデータサイエンティストの定義を以下の通り掲げ、スキル育成と評価のための軸や基準を作っています。
現時点でデータサイエンティスト協会が定めたデータサイエンティストの定義は以下の通りです。
- ビジネス力:『課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力』
- データサイエンス力:『情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力』
- データエンジニアリング力:『データサイエンスを意味のある形に変えるようにし、実装、運用できるようにする力』
引用:https://www.datascientist.or.jp/symp/2021/pdf/20211116_1400-1600_skill.pdf
データサイエンティスト協会では、上記3つのスキル全てがバランスよく揃ってこそ、真のデータサイエンティストであると定めています。データを扱い、分析する力をベースに価値を創り出し、ビジネス課題に答えを出すということができなければなりません。
つまり、データを使える人だけでは不足し、ビジネス課題を解決するところまでが一連の流れだと言えるでしょう。
データサイエンティストと似た職種
データサイエンティストとよく似た職種として、以下の2つが挙げられます。
- データアナリスト
- データエンジニア
類似ポジション/データアナリスト
よくデータサイエンティストと混同される仕事にデータアナリストという職種があります。
確かにデータサイエンティストとアナリストは非常に似ている職種ですが、業務の領域が少し異なります。
データアナリストは、データサイエンティストよりもデータ処理や現状分析に注力する傾向にあり、要件ヒアリング・課題抽出・提案などビジネス側を強く意識しながら分析するのが特徴です。
時にはサイエンティストとビジネスの両者をつなぐ役割のような働きも担うので、企業や組織によっては役割として重複している部分もあるかもしれません。ただし、一般的にデータサイエンティストの方が上位に当たると言われています。
類似ポジション/データエンジニア
もう一つデータサイエンティストと混同される仕事がデータエンジニアです。
データエンジニアはその名の通りエンジニアなので、ビックデータを活用する際の分析基盤やインフラの設計・構築・運用などを行うほか、データ可視化ツールの開発やレコメンドエンジンや広告配信システムの開発やデータベースの構築を行います。
つまり、集められたデータを整理するための開発や設計を行うと考えてもらっても良いでしょう。
データサイエンティストやデータアナリストと協業するため、統計学の知識はそれほど求められません。逆にエンジニアとしてのITスキルやインフラ、クラウド、データベースについて設計から開発、運用、保守までの高いスキルが求められる職種と言えるでしょう。
データサイエンティストの仕事内容
ここからは、データサイエンティストの具体的な仕事内容についてみていきましょう。データはそれ単体ではビジネス的な価値を持ちません。
データサイエンティストは、ただの文字や数字の羅列に過ぎないデータに意味をもたすことで、ビジネス課題の解決へと導きます。
データサイエンティストが行う大まかな業務工程は以下です。
- データの収集
- データの加工(データクレンジング)
- データの可視化
- データの分析とレポーティング
- 業務への組み込みと検証
データの収集
ビジネスの現場や経営陣とディスカッションを行い、どのようなビジネス課題を解決するべきなのか、また解決に導くために何のデータを収集するべきかのかを明確にします。
その上で実際にデータの収集を行います。
データの収集経路は、自社のデータベースやAPI・ウェブスクレイピング・Cookie・センサーデータなど多岐に及びます。必要なデータが自社にない場合は、外部の調査会社や他社からデータベースのライセンスを購入するといったことが求められます。
データの加工(データクレンジング)
収集したデータは、そのまま分析に活用できるわけではありません。多くの場合、分析に関係のないノイズや欠損が含まれています。
そのため関係のないデータや重複データの削除やフォーマット・単位を揃えるといったデータの加工(データクレンジング)を行う必要があります。
データクレンジングを適切に行わないと、分析モデルの精度が低くなってしまう恐れがあります。
データの可視化
抽出したデータを分析しやすいようにグラフやチャートに落とし込む「ビジュアライゼーション」を行います。
データの可視化を行うことによって、一見すると読み取りづらい法則性や情報にたどり着くことができます。
データの分析とレポーティング
可視化したデータをビジネス課題の解決に向けて具体的な施策が打てるように、分析とレポーティングを行います。
今後データサイエンティストの需要はますます高まる
今後、データサイエンティストの需要はますます高まると予想されています。
ビックデータやAI領域のサービスは世界的にも日々増加しており、生活の中で感じている人もいるかと思います。サービスの数や取り扱うデータの数が増えれば増えるほど、データサイエンティストの必要性は更に注目を浴びていくでしょう。
しかし、需要が高まっているにも関わらず、実は人材教育が追いついていないという現象が起こっています。つまり需要に対して供給が追いついておらず、結果的に需要だけが右肩上がりになっているということです。
このような背景からもデータサイエンティストの需要はこれから先の未来、ますます高まっていくと予想されています。
ではもう少し具体的な理由について以下で解説していきたいと思います。
ビッグデータ・AI領域のサービス拡大に伴う需要の増加
まず、世界的にビックデータやAI領域のサービスが拡大しており、SEや他のエンジニアと同様に需要が急激に増加しています。
IT企業だけに止まらず、世界中の様々な分野でAIシステムの導入に注力しています。
例えば、位置情報を利用したサービスや人体情報を利用したヘルスケアサービスなど、すでに身近で目の当たりにしたことがあるのではないでしょうか。 AI開発においては効率よくデータを収集し、適切にアウトプットすることが求められますが、優れたAI開発をするためには人間の力が必要不可欠です。
データの分析結果に基づき、新しい道筋を導き出したり、定義づけを行ったりする作業は現在のAIには出来ず、データサイエンティストの需要はますます高まっていくでしょう。
教育が強化されている
また、大学や教育機関においてデータサイエンスの教育の強化がなされており、国や教育機関はこの分野に力を入れています。
実際に文部科学省が2019年に「AIなどを踏まえたAI人材の育成について」という資料を公開しており、今後、データサイエンスの分野で力を入れていくことを公式的に発表しています。
具体的にはデータサイエンス教育の展開に経済的な援助を行うことや全国の大学へ普及・展開を加速していくために注力すると記載されていました。
国をあげて様々な施策を行っていることを踏まえると、今後データサイエンスの分野は更に拡大し、人材も必要となってくることも容易に予想できます。
一方で、力を入れ始めたのは最近のことなので、施策の効果を見るにはもう少し時間がかかるでしょう。そういう意味ではビックデータの活用が進むスピードと人材育成のスピードが釣り合ってないので、今後も高い需要が続くと予想できます。
即戦力の人材は不足している
先ほども少し触れた通り、データサイエンスの分野で教育に力を入れ始めてからあまり時間が経っていません。
世界的に急激な速さで注目を集めるようになった分野ではありますが、教育が追いついていないという現象に陥り、即戦力の人材が不足しているという状態です。
また、大学や専門学校などの教育機関で教育を受けられなかった人材がデータサイエンティストになる方法が整備されておらず、需要に対して入り口が狭いという課題もあります。
そのため、最近では企業内で教育を行う前提で採用するポテンシャル採用も増えているので、20代の未経験転職組を積極的に採用しているような企業も出てきました。
このような状況を踏まえても、需要と供給が一致していないということは見て取れると思います。
実際に2019年に経済産業省から発表されたデータによると2030年にはIT人材は78.7万人不足し、AI人材は14.5万人不足すると言われているので、人材が日本で不足していくことは言うまでもないでしょう。
データサイエンティストが無くなると言われている理由
様々な企業や団体がデータを活用して新たなビジネスを生み出し、経営判断に活用するようになったことを受けてデータサイエンスの分野では急激に需要が高まっているのは事実です。
一方で「データサイエンティストという職業はなくなる」と言われている記事やニュースを見かけたことはないでしょうか。
なぜ、このような見方が出ているのか、その理由や背景についても解説していきたいと思います。
AI技術の進歩
まず、AI技術が進歩することでデータサイエンティストの仕事は置き換えられてしまうと考えられています。
現在はデータサイエンティストが機械学習やディープラーニングの技術を利用してデータ分析を行っているものの、AI技術が進歩するとこの部分も機械が実施するのではないか、と危惧する声が上がっているのです。
現状は人がデータ分析をしていますが、将来的にはデータ分析やビジネスへの提言の部分までAIが代わりに行うような時代がくるのでは、とも囁かれています。
”データサイエンティスト”の定義があいまい
AI技術が注目され始めて時間があまり経過していないため、データサイエンティストの定義や役割分担が曖昧です。
データサイエンティストに近い職種にはデータアナリストやデータエンジニアがありますが、それぞれの業務領域や分担は曖昧で、企業や組織によっても異なる場合があります。現状ではデータサイエンティストという名称にクライアントが過剰に期待し、ミスマッチを起こしてしまうケースもあり、誤解や混乱を招きがちです。
役割の細分化や明確化が進むと、現在のデータサイエンティストが行っている業務内容が他の職種に吸収され、「データサイエンティスト」という職種がなくなってしまう可能性もあるでしょう。
スキルの低い技術者はふるい落とされていく
現状ではデータサイエンティストの分野においてニーズが優っています。
つまり「雇いたい」という需要に対して、対応する経験やスキルを保持している人材がおらず、求職者も少ないというのが現状です。しかし、将来的に人材教育が進み、経験者が増えていくと需要と供給の比率が逆転することも考えられます。
データサイエンティストは求められる専門性やスキルが高くなる職種です。そのため、常にスキルアップを行う必要があり、AI分野での最新動向を掴むことも欠かすことはできません。
AI技術が進歩すればするほど、求められるレベルが高くなり、スキルの低い技術者は必要とされなくなる可能性があります。このような事態が起こると転職のハードルが上がり、業界全体の衰退を招くのでは?と考えている人たちもいるのです。
10年後も求められるデータサイエンティストになるために

AIの台頭により、データサイエンスという職業が無くなってしまうということを危惧する声もありますが、今すぐになくなるというわけではありません。
しかしながら、業界動向によってはデータサイエンティストという名称がなくなったり、一部がAIに置き換わったりする可能性はゼロではないでしょう。
では、現在データサイエンティストとしてキャリアを歩み始めたばかりの人や業務でデータに触れている人たちが10年後も求められる人材になるためにはどうすれば良いのでしょうか。以下では今後のキャリアの方向性や選択肢について具体的にご紹介していきます。
キャリアプランの一例
データサイエンティストや近しい分野での経験を持っていると活かせるキャリアは様々です。
これまでにお伝えしていた通り、幅広い分野で必要とされている職種だからこそ、可能性は更に広がっていくとも言えるでしょう。
ビッグデータの活用を進めている不動産や小売業だけでなく建設や物流など、これまでITとは程遠いと言われていた業界ですら機械学習やデータマイニングなどを活用してビジネスに役立てようとしています。
そのため、業界・分野を問わずキャリアの選択肢は広げられるでしょう。もう少し具体性を持たせるために以下にいくつかの例を挙げてみます。
- データ分析・AIに特化したサービスを展開する企業
- 大手コンサルティングファームのデータ戦略部門
- 自社サービスのデータ分析部門
- メガベンチャーでデータ分析をベースにBizDevなど裁量権を広げる
上記の通り、データ分析やAIに特化したサービスもあれば、分析結果をクライアントに提案するコンサル、自社サービスを分析して改善する部門などが挙げられます。
今のうちに視野を広げておきつつ、どのようなキャリアを歩みたいのかを考えて普段の業務や日々の自己学習に取り組むことが大切です。
身につけるとよいスキル
データサイエンティストや同分野で活躍の場を広げるためにつけておいた方が良いスキルは歩むキャリアによっても異なりますが、大きく分けるとビジネススキルと業界動向を把握することが挙げられます。
データサイエンティストとしての専門分野(ITスキルや統計学など)は当然のこと、ビジネス的な視点や問題解決力を持つことが大切です。また、常に業界の最新技術にアンテナを貼っておくことも忘れずにしまよう。
身につけておくべきスキルの範囲は広いので、全ての知識を一人で高めていくのは難しいかもしれません。その場合は、今後のキャリア像から逆算して優先順位をつけながらスキルアップすることをおすすめします。
とはいえ、やはりできる限りスキルを増やしていくことに越したことはないので、出来るところから始めていくと良いでしょう。
ビジネススキル
データサイエンティストは数学や統計、ITの知識はもちろん、ビジネススキルを身につけておきましょう。
現状の経営課題や状況を把握した上で、ビックデータを分析し、今後のビジネスの方向性や事業戦略を立案することや、新たなビジネスを提案するためには経営的なセンスがあると、非常に重宝されます。
もちろん組織によって担当領域は異なりますが、一般的にデータサイエンティストはデータを分析して終わりではなく、分析されたデータをいかに活用するかが大切なのです。
データの読み方、使い方一つで方向性が変わってしまい、経営に影響する可能性もあるため、経営に関するスキル(会計やマネジメントなど)は可能な限り身につけておくことをおすすめします。
最新技術にアンテナをはる
データサイエンティストとして生き残るためには必須と言っても過言ではありません。
業界の最新動向や知識、課題を継続的に習得することは必要不可欠です。常に最新技術や市場状況に対してアンテナを張っておきましょう。
情報を収集して正しく分析するためには業界の知識や課題を習得し、自分自身の見解を持てるようになっておくことが必要です。業界の動向や最新技術を把握していなければ、自分の目の前にある課題解決の方法がわからないという事態にも陥りかねません。
日々、凄まじいスピードで変化しているAI分野においては常に情報を掴んでおくということは必須なのです。
まとめ
今回はデータサイエンティストの今後の動向と10年後も求められる人材になるためのコツについてご紹介しました。
今後更なる需要が求められる分野ですが、未だに定義が定まっていなかったり、曖昧になっていたりすることもあります。
これから先、データサイエンティストの定義が更に明確・細分化されることでデータサイエンティストという名称が変わっていく可能性もあるでしょう。ポジション名にとらわれず、自分自身がやりたいことや実現したいキャリアから身につけるべき経験や方向性を考えていくことが大切です。
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