委任?委託?請負?「契約」の違いを徹底解説!

委任契約、委託契約、請負契約とビジネスではさまざまな契約形態が存在します。しかし、それぞれの契約についてきちんと理解している人は多くありません。

この記事では、委任・委託・請負それぞれの契約形態についての違い、契約内容に記載される内容について解説していきます。どの契約が自分の仕事に適しているかを判断できるようになりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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この記事の目次
  1. 委任と委託の基本的な違い
  2. 委任契約の使い分け方
  3. 業務委託契約と委任契約・委託契約の違い
  4. 請負契約との違い
  5. 委任や委託契約における報酬と責任の違い
  6. 契約時に注意すべきポイント
  7. 委任と委託に関してよくある質問
  8. まとめ

委任と委託の基本的な違い

まず「委任」と「委託」の基本的な違いを解説します。

委任とは

委任とは、一定の業務の遂行を他者に任せる契約形態です。主に法律行為が中心となりますが、事実行為を含む場合もあります。民法643条では委任契約について以下のように定義付けています。

<民法643条>「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」
出典:民法 | e-Gov 法令検索

委任契約の特徴は、法律行為を伴う業務を他者に任せることが主な目的であり、受託者(委任を受けた側)には業務を必ず完了させる義務がない点です。つまり、委任契約では業務が途中で終わった場合でも、受託者が適切に業務を行っていれば、委任者(依頼側)には報酬を支払う義務が発生します。

委任契約の代表例としては、以下のような業務があります。

  • 訴訟の代理を弁護士に依頼する
  • 確定申告業務を税理士に依頼する
  • 名義変更登記を司法書士に依頼する

委任契約と似た言葉に「準委任契約」があります。準委任契約は、委任契約とは異なり、委託する内容が法律行為である必要がありません。たとえば、医師による診療行為やコンサルタントの助言提供など、法律行為に該当しない業務が準委任契約として扱われます。この契約形態は、法律行為に限定されないため、幅広い分野で適用されています。

委託とは

委託契約とは、外部の専門家や事業者に特定の業務を任せる契約形態です。成果物の提供を目的とする場合もありますが、業務の遂行そのものが目的になるケースもあります。

委任と委託の契約上の違い

委任と委託の契約上の違いについては、以下の表の通りです。

項目委任契約委託契約
内容依頼された仕事を「やること」を約束する契約(過程が重視される)依頼された仕事の「成果物」を納品することを約束する契約(結果が重視される)
目的業務を遂行してもらうことが目的(成果の保証は求めない)業務を遂行した結果、成果物を納品することが目的
・弁護士への法律相談
・税理士への税務相談
・医師の診療や相談
・フリーランスへのコンテンツ制作委託
・建設工事や建設業務の委託
・パンフレットやWebサイトの制作
責任の範囲業務を遂行する責任があり、成果そのものは保証しない成果物を納品する責任がある。成果物が契約内容に適合していることが求められる
報酬業務の遂行(過程)に対して支払われる。成果の有無にかかわらず報酬は発生することが一般的成果物が完成し、納品された場合に報酬が発生する。成果物が求められる品質や納期に達していない場合、報酬が発生しないこともある

委任契約は、仕事の遂行を依頼して業務を行ってもらうことが目的であり、成果そのものを保証するものではありませ委任契約は、業務の遂行やアドバイスを依頼する契約で、成果物の完成や結果の保証は求めません。

一方、委託契約は、業務の成果物を納品することを目的とした契約です。これにより、契約の目的や責任の範囲が大きく異なります。

たとえば、業務のコンサルティングを依頼する場合、委任契約ではコンサルタントが助言や提案を行う責任を負うものの、最終的な成果の達成(例えば売上の向上など)は保証されません。一方、委託契約の場合は、成果物の完成や納品が目的であり、具体的な成果物(例:レポートや計画書など)を納める義務があります。

契約の目的や責任の範囲を正確に理解し、それに応じた契約を選ぶことが重要です。

委任契約の使い分け方

委任契約と委託契約は、次のように使い分けます。

委任契約に適している業務

委任契約は、業務の過程や専門的な知識提供を重視する場合に適しています。たとえば、弁護士への法律相談や医師による健康アドバイスなどが典型例です。

【委託契約のポイント】
専門家の知識やスキルを借りることが主目的
・結果や成果の保証はない

委託契約に適した仕事

委託契約は、依頼された業務の成果物が完成し、納品されることを重視します。たとえば、パンフレットデザインの完成やソフトウェアの開発などが該当します。

【委託契約のポイント】
・成果物の品質や納期が重要視される。
・依頼内容に基づく完成品が必要。などで用いられることが多い

業務委託契約と委任契約・委託契約の違い

それぞれの契約には次のような特徴があります。

委任契約:業務の遂行を依頼し、その過程や内容が重視される契約。成果の保証は求めない。
委託契約:業務の成果物の完成を目的とした契約で、成果物の納品が重視される。
請負契約:成果物の完成と納品が契約の要件であり、未完成の場合は報酬が発生しない。

業務委託契約は、継続的な業務や特定のタスクを外部の専門家や業者に委託する場合に最適です。
例えば、カスタマーサポートの外注や日常業務の一部代行などの業務が適しています。

請負契約との違い

委任契約や委託契約と似た言葉として「請負契約」が挙げられます。それぞれの契約との違いについて解説していきます。

請負契約とは?

請負契約とは、依頼者(発注者)が業務の依頼を行い、依頼した業務が完了した際に報酬を支払う契約のことです。依頼した仕事に対して、「成果物」を完成させる義務が受注者に発生します。

請負契約では、完成した成果物の引き渡しが契約の重要な目的です。作業の過程や進捗状況に関わらず、契約で定めた成果物が納品されることが求められます。そのため、成果物の完成が必要な業務に適しています。

請負契約に適している業務としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 建設工事(例: 建物の建設、リフォーム)
  • ソフトウェア開発
  • 製品の製造

請負契約と委任契約の違い

請負契約と委任契約の違いは、以下の表の通りです。

項目請負契約委任契約
目的成果物や完成品の納品業務の遂行やアドバイスの提供
責任範囲成果物の完成と品質業務の遂行や適切な対応
報酬の発生条件成果物が完成し、納品されること業務遂行やアドバイスが実施されること

請負契約は、成果物の完成と納品がゴールとなる契約で、作業の過程は重要視されません。完成した成果物が納品されなければ報酬は発生しないため、成果物の品質や仕様が責任範囲に含まれます。

一方、委任契約は、依頼された仕事の遂行やアドバイスなどが目的であり、成果そのものを保証するものではありません。報酬は業務遂行やアドバイスに対して発生し、成果物の完成は求められないことが特徴です。

請負契約と委託契約の違い

項目請負契約委託契約
内容成果物や完成品を依頼者へ確実に納品する契約業務を遂行することを約束する契約
目的成果物や完成品の納品依頼された業務の遂行
ソフトウェア開発、建設工事データ入力、清掃業務
責任の範囲成果物を完成させる責任業務を遂行する責任
報酬の発生条件成果物が完成し、納品が完了した場合に報酬が発生する決められた業務を適切に遂行した時点で報酬が発生する

請負契約は成果物の完成が必須である一方で、委託契約では業務の遂行自体が重要視されます。ただし、委託契約においても、成果物が求められるケースがあります。

委任や委託契約における報酬と責任の違い

委任契約、委託契約の報酬と責任の違いや、報酬が発生しないケースとその理由について解説していきます。

委任契約の報酬と責任

委任契約の報酬は「アドバイス」や「サポート」に対して支払われます。アドバイスやサポートを実施した時点で、契約上の報酬の発生条件は満たしているため、成果物の完成は求められません。

たとえば、弁護士への法律相談を行い、弁護士から法的なアドバイスを受けた時点で報酬の発生条件は満たしています。委任契約の報酬は「業務内容」や「業務過程」に基づいて支払われることが特徴です。

訴訟の際に弁護士が法律相談を受け、必要な書類の作成や法的助言を行ったとしても、裁判に勝つ保証はありません。つまり結果ではなく、法的助言を行うなどの過程に対して報酬が発生し、業務責任も合わせて生じることになります。

委任契約では依頼した「業務の完了」や「専門的な意見の提供」が報酬の前提となっており、成果についての責任は発生せず、報酬の条件ではないことを押さえておきましょう。

委託契約の報酬と責任

委託契約では、依頼した「成果物」が完成し、依頼者に納品されることが報酬発生の条件です。成果物が完成していない場合や、品質が契約基準を満たしていない場合には、報酬は支払われません。

そのため委託契約において、委託を受けた側が仕事を途中で終わらせてしまったり、品質が求める水準に達していない場合には、報酬の発生条件を満たしていないことになります。

たとえばWebサイトの制作を依頼した委託契約の場合、依頼通りのデザインや機能を備えたWebサイトが納品されることで、報酬が発生します。Webサイトが完成していない場合や、機能に不具合があるなどの場合には報酬が発生しないケースもあります。

委託契約では成果物の完成が義務付けられるため、品質と納期に対する責任が重要です。納品後の検収(内容確認)で問題が発見されると、報酬が発生しない可能性があるため、契約基準を満たす品質を維持することが求められます。

報酬が発生しないケースとその理由

契約の種類によって、報酬が発生しないケースがあります。それぞれの代表例と理由は以下の通りです。

契約の種類報酬が発生しないケース理由
委任契約アドバイスやサポートが適切に実施されなかった場合契約内容に沿った業務遂行が行われなければ報酬は発生しないため
委託契約成果物が依頼通りに完成していない場合完成した成果物の納品が契約の条件となっているため
委託契約成果物が期限内に納品されていない場合契約で定められた納期を守らなければ報酬は発生しない

契約時に注意すべきポイント

契約を結ぶ際には、以下のポイントを確認し、トラブルを防ぐことが重要です。

契約書に記載すべき重要な項目

委任契約や委託契約を結ぶ際には、契約書に以下のような項目をきちんと記載することが大切です。

<委任契約・委託契約における契約書に記載すべき重要な項目>

項目内容
報酬依頼した仕事に対して、報酬の金額、支払うタイミングや条件を記載
責任範囲依頼者および受託者の責任内容を記載
成果物の完成条件どのような状態であれば完成として認めるかを記載

契約書があることで、依頼者と受託側の間でトラブルなどが発生した場合に、どちらがどのような責任を負うのかが明確になります。

さらに報酬についてもどれくらいの報酬が支払われるのか、一括払いなのか分割払いなのかを記載することで無用なトラブルを避けられます。

契約時にトラブルを避けるための注意点

契約を結ぶ際には、後々のトラブルを避けるために事前に内容を精査し、しっかりと確認しておくことが大切です。主な注意すべき点としては、以下の3点が挙げられます。

  • 報酬の確認
  • 仕事内容と完成の基準
  • 責任の範囲

報酬のトラブルは少なくありません。支払いが遅延している、金額が異なっているなど大きなトラブルに発展する可能性が高い要素のため、「いつ、どのように支払われるのか」を明記しているかを確認しましょう。

仕事内容と完成の基準も大切です。とくに委託契約では「どの程度までできていれば完成とするか」を明確にしていないと、相互の理解で齟齬が起こってしまいます。たとえばWebサイトを制作する場合、デザインや機能性において、何をどこまで制作する必要があるのかを具体的に記載しておくことが大切になります。

最後に責任の範囲です。納期に遅れてしまう場合や、予期しない問題が発生した場合にどちらがどのように対応するかなどです。責任の範囲を明確にしておくことで、トラブル時の責任の所在が明確にでき、トラブルが大きくなることを防げます。

法律行為に基づく契約の確認方法

法律行為に基づく契約の確認方法としては、以下の3点が主に挙げられます。

  • 契約書の作成
  • 両者の署名と押印
  • 法的なルールに沿っているかを専門家に確認

契約書を作成することによって、文章で契約内容を確認できます。仕事の内容から報酬、責任範囲、成果物の完成条件や納期などを明確に記載することで、法律上でも重要な役割を果たします。口頭での合意だと言った言わないとなる可能性があるため、文章を残すことが大切です。

また作成した契約書には両者の署名と押印をします。署名と押印をすることで、契約内容に同意した証拠になります。契約書の作成だけに終わらず、署名と押印をお互いにすることが大切です。

最後に専門家への確認です。契約書の内容が法律違反をしていないか、不公平な条件になっていないかなどがある場合、契約が無効になる可能性があります。

不明瞭な点や気になる点は弁護士などに相談すると、正当な契約内容かの確認ができます。

委任と委託に関してよくある質問

委任と委託に関してよくある質問を以下にまとめてみました。

  • 委託契約と委任契約の違いは何ですか?
  • 請負契約と委託契約の違いは何ですか?
  • 委任契約で報酬が発生しないケースはありますか?
  • 委託契約で成果物の完成は必ず必要ですか?
  • 契約書に記載すべき重要なポイントは何ですか?
委託契約と委任契約の違いは何ですか?

委任契約:業務の遂行やアドバイスの提供を依頼する契約で、成果物の完成や結果の保証は不要。
委託契約:成果物の完成が目的の契約で、完成品が納品されることが報酬の発生条件となる。

請負契約と委託契約の違いは何ですか?

請負契約:成果物の完成と納品が必須。未完成の場合、報酬は発生しない。
委託契約:業務の遂行を重視。成果物が必要な場合もあるが、必須ではない。

委任契約で報酬が発生しないケースはありますか?

委任契約では、依頼された業務が適切に遂行されない場合、報酬が発生しないことがあります。たとえば、弁護士や税理士が依頼内容に沿ったアドバイスやサポートを提供しなかった場合、報酬の支払い義務は生じません。

報酬は契約条件に基づいた業務遂行が前提であり、不適切な対応や業務不履行があれば報酬は発生しない点に注意が必要です。

委託契約で成果物の完成は必ず必要ですか?

委託契約では、成果物の完成が求められる場合があります。たとえば、パンフレットのデザインや調査報告書の作成などは、依頼内容を正確に反映した完成品の納品が必要です。成果物が依頼内容と異なったり、品質を満たしていない場合には、報酬が支払われないこともあります。

成果物の完成は、依頼者がそれを活用するために重要です。受託側には、契約内容に沿った成果物を完成させる責任が求められます。

契約書に記載すべき重要なポイントは何ですか?

契約書には以下の3点を明記することで、トラブルを防止できます:

  1. 報酬:金額、支払条件、タイミングを明確に記載。
  2. 責任範囲:依頼者・受託者それぞれの責任を明示。
  3. 成果物の条件:成果物が完成品とみなされる基準を具体的に記載。

これらを明確にすることで、契約内容に基づき安心して業務を進めることができます。

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まとめ

委任契約、委託契約、請負契約と契約の種類は多くあります。それぞれの契約についての知識を身につけることで、無用なトラブルを避けることにもつながるでしょう。

また、どの契約においても「報酬」「責任の範囲」「成果物の条件」について確認しておくことが大切です。契約書にサインをする際には、上記の内容が適切に明記されているかを必ず確認しましょう。

きちんとした知識を身につけ、安心して仕事に取り組めるようにそれぞれの契約の違いについて理解を深めてみてください。

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