ITエンジニアにとって重要なスキルのひとつがコミュニケーション能力です。特に要件定義やプロジェクト進行中、システム運用開始後といった顧客折衝の場面で適切なコミュニケーションが求められます。信頼関係の構築や問題解決のためのやり取りは、プロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではありません。
顧客折衝で適切な対応ができなかったために、トラブルに発展したという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。本記事では、筆者の失敗事例をもとに、顧客折衝で大切にすべきコミュニケーションのポイント5選を紹介します。

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顧客折衝が必要となる3つの場面
IT人材の仕事は設計書の作成やプログラミングだけではありません。以下の3つの場面では顧客折衝が求められます。
- 要件定義や仕様決定時
- プロジェクト進行中
- システム運用開始後
各場面について詳しく解説します。
要件定義や仕様決定時~信頼関係の構築が重要~
要件定義や仕様決定の段階は、プロジェクトの基盤を築く重要なフェーズです。クライアントとの信頼関係を構築できるかどうかが、プロジェクト全体の成否を左右します。クライアント側は、こちらのスキルや対応力を見極めようとしているため、慎重な対応が求められます。
クライアントの業務内容や課題を理解したうえで、担当者とのプライベートな話題を交えたコミュニケーションを積み重ねて信頼関係の構築を目指します。「どのような業務で困っているのか」や「過去にどんなシステムを使っていたのか」といった質問を通じて、相手が抱える本音に迫っていきます。
「自分たちの課題解決に真剣に向き合ってくれる」という姿勢が伝われば、プロジェクトがスムーズに進むだけでなく、長期的な関係性にもつながるでしょう。
プロジェクト進行中~運命共同体としてのやり取り~
プロジェクト進行中は計画通りに進まないことも多く、想定外の問題が発生する時期です。クライアントと運命共同体として協力する姿勢を見せましょう。進捗管理や仕様変更への対応など、双方にストレスが生じやすい場面も出てきます。
クライアントから無理難題を突きつけられた場合でも、頭ごなしに断るのではなく、まず話を聞いてみましょう。無茶な要求であっても「できる部分」と「できない部分」に分けて伝え、代替案を提案すれば相手の納得感につながります。
「同じ目標に向かっている」という意識を共有するために、小さな成功体験の積み重ねが有効です。進捗報告時に達成した成果を共有し、互いの努力を認め合えれば信頼感が高まるでしょう。運命共同体であるとの姿勢で臨めば、仮にトラブルがあってもプロジェクト全体はスムーズに進行します。
システム運用開始後~バグ対応や謝罪の日々~
システム運用開始直後は、不具合やバグ対応が頻発しやすい時期です。不具合が発生した際には、クライアントから厳しい指摘を受ける場合もあるでしょう。その場しのぎの回答は避け、根本的な解決策を提示しなければなりません。「原因調査中」といった曖昧な回答はせずに、「〇〇時間以内に修正します」と具体的な対応スケジュールを示せば安心感を与えられます。
謝罪が必要な場面では、言葉だけでなく態度でも誠意を示しましょう。不具合対応だけで終わらせるのではなく、「この機能を追加すればさらに業務効率化に繋がる」といった、提案型のコミュニケーションも効果的です。
トラブル時こそ冷静さと誠実さを保ち、クライアントとの関係性維持に努めましょう。
筆者がやってしまった3つの失敗例
過去に筆者がやってしまった失敗例を3つ紹介します。ITエンジニアであれば経験がある方もいるでしょう。
- 自分目線のコミュニケーション
- 安請け合いで上司から叱責
- 口頭ベースのみのやり取りで言った言わない
ひとつずつ振り返ります。
自分目線のコミュニケーション
顧客折衝において自分目線のコミュニケーションは大きな失敗を招きかねません。筆者は、クライアントの状況やリテラシーを十分に理解しないまま話を進めた結果、信頼を損ねた経験があります。
現場では紙ベースの業務が主流で、ITリテラシーの高くない担当者が多かったにもかかわらず、「パソコンくらい使えるだろう」という前提で説明をしてしまいました。提案内容は全く受け入れられず、振り出しに戻ってしまったのです。
相手の立場や知識レベルを事前に把握して、適切な説明を行う重要性を学びました。専門用語を避けたり図解や具体例を用いたりして、相手が理解しやすい形で情報を伝えましょう。クライアント目線で考える姿勢を持てば、信頼関係が深まりスムーズなコミュニケーションが可能です。
安請け合いで上司から叱責
クライアントとの関係性が深まると、つい気が緩みやすくなります。筆者も食事会の席で気が大きくなり、上司への確認を怠ったまま要望を安請け合いしてしまった経験があります。
クライアントには喜んでいただけましたが、実際に対応しようとすると予想以上の工数が必要だったため大きな問題となりました。結果的に上司から厳しく叱責されるだけでなく、チーム全体にも迷惑をかけてしまったのです。
失敗から得た教訓は、「その場の雰囲気に流されず、一度持ち帰って検討する」という冷静さの重要性です。
非公式な場では気持ちが緩みやすいため、「上司と相談してから回答します」と明確に伝えてトラブルを防止しましょう。安易な約束は一時的な満足感を生むかもしれませんが、長期的には信頼関係を損ねてしまいます。
口頭ベースのみのやり取りで「言った」「言わない」の事態に
電話や口頭でのやり取りだけで済ませると、後々トラブルにつながる可能性があります。
筆者も過去に、不具合修正の際に口頭だけで内容を確認した結果、「言った」「言わない」の齟齬が生じデータ修正をやり直す羽目になりました。
どんな状況でも記録を残さなければなりません。電話でのやり取り後にはメールで内容をまとめ、「この内容で間違いありませんか?」と確認する習慣を身につけましょう。そうすれば、誤解を防止できます。不具合対応時には簡易的な報告書でも構わないので作業内容と結果を書面化して、後続作業への影響も最小限に抑えましょう。
記録を残すことは手間に感じるかもしれませんが、それ以上のトラブル回避効果があります。
顧客折衝で大切にすべきコミュニケーションのポイント5選
筆者が顧客折衝での失敗から、以下の5つのコミュニケーション力が必要だと学びました。
- 顧客の話を聞き切る傾聴力
- 相手の目線に合わせた説明力
- 顧客目線の提案力
- 関係者全体を把握する俯瞰力
- スケジュールや案件の調整力
順番に解説します。
顧客の話を聞き切る傾聴力
顧客折衝において相手の話を「聞き切る」傾聴力は基本かつ重要なスキルです。相手の話を聞いている途中で自分の意見や考えが浮かび、相手に集中できなくなる場合もあるでしょう。
顧客が本当に伝えたい「奥底の考え」や「思い」を引き出すには、自分の思考を止めて相手に集中しなければなりません。相手の呼吸や体の動き、声のトーンに注意を払いながら話を聞けば言葉だけではなく感情やニュアンスも汲み取れます。
傾聴の姿勢は顧客に「真剣に話を聞いてくれている」という安心感を与え、信頼関係を深めます。顧客のニーズを正確に把握できるため、提案や対応も的確になります。傾聴は単なるスキルではなく、顧客との関係構築の土台となる重要な要素なのです。
相手の目線に合わせた説明力
顧客とのコミュニケーションでは、専門用語や難解な表現は避けましょう。ITリテラシーが高い相手には通用するかもしれませんが、多くの場合、専門用語は伝わりません。専門用語を使うと相手は理解できず、不安や混乱につながります。相手のレベルに合わせて噛み砕いた説明を行いましょう。
「データベースの最適化」を説明する際には、「データが素早く見つかるように整理する作業」といった形で具体的かつ平易な言葉に置き換えると効果的です。生成AIや図解ツールを活用して視覚的に説明すれば、さらに理解が深まります。
このような配慮は顧客に安心感を与え、「この人なら任せられる」と感じてもらうきっかけになります。相手の目線に合わせた説明は、信頼構築とプロジェクト成功への第一歩です。
顧客目線の提案力
提案内容が自社製品や技術中心になりすぎると、顧客の心には響きません。顧客が何を求めているかを深く理解し、適切な形での提案が重要です。新しいシステム導入について提案するのであれば、「便利になります」という抽象的な表現ではなく、「業務効率が30%向上し、人件費削減につながります」といった具体的なメリットを伝えて説得力を増しましょう。
顧客自身も気づいていない潜在的な課題を掘り起こし、解決策を提示できれば「この提案は自分たちのためにある」と感じてもらえます。顧客目線で考える姿勢が伝われば信頼関係の構築にもつながり、長期的な協力関係につながります。
関係者全体を把握する俯瞰力
プロジェクト成功には関わる全ての関係者を把握し、適切な関係性を築く俯瞰力が必要です。特定の担当者だけと密接に連携していても、プロジェクト全体で見ると不十分です。「誰が意思決定権を持っているか」「どの部門がプロジェクトに影響するか」を見極めておかないと、後々調整不足によるトラブルが発生しかねません。
さまざまな関係者とコミュニケーションを取っておけば、新たな視点や課題の発見につながります。俯瞰的な視点はプロジェクト進行中だけでなく、その後の運用フェーズでも有効です。
一人ひとりとの信頼関係を丁寧に築きつつ、大局的な視野でプロジェクト全体に目を向けましょう。
スケジュールや案件の調整力
クライアントは業務内容には精通していても、プロジェクト進行については十分に把握していない場合があります。「どれが最優先事項なのか」「どこで妥協すべきなのか」を適切に調整しながら進める能力が求められるのです。「この機能は後回しにしても問題ないですが、この部分は早急に対応すべきです」といった形で優先順位を明確化すると、クライアントも納得しやすくなります。
スケジュール変更や仕様追加など予期せぬ事態にも柔軟に対応しつつ、影響範囲やリスクを丁寧に説明することで信頼感を高められます。高い調整力を身につければ、プロジェクト全体がスムーズに進むだけでなく、不測の事態にも強い体制が構築できるでしょう。
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コミュニケーションを工夫して顧客の信頼を勝ち取ろう
顧客折衝においてコミュニケーションスキルは不可欠な能力です。本記事で紹介した5つのポイント、すなわち傾聴力、優しい言葉での説明力、顧客目線の提案力、関係者全体を把握する俯瞰力、そしてスケジュールや案件の調整力を意識して実践し、顧客との信頼関係を築きましょう。一朝一夕には身につきませんが、日々の業務の中で意識的に取り組めば着実に向上します。
失敗を恐れず、むしろそこから学ぶ姿勢を持つことが重要です。顧客の信頼を勝ち取ることは、プロジェクトの成功だけでなく、自身のキャリア発展にもつながります。コミュニケーションを工夫し、顧客と共に成長していく姿勢を持ち続けましょう。
ライター:にのまえ はじめ
大手精密部品メーカーで社内SE・PGを経験。その後、国内のSIerに転職し生産管理システムの開発・導入・保守・運用を担当。現在は自らIT企業を立ち上げ、顧客企業のDX化やIT化による業務改善の支援を行っている。並行して企業サイトやWebメディアでライターとしても活動中。趣味は筋トレ・プロレス観戦。
Website:https://writer.yui-road.com/
