2024/03/04

インボイス制度ってフリーランスにどんな影響あるの?

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インボイス制度ってフリーランスにどんな影響あるの?

最近、インボイス制度についてニュースやインターネットなどで話題になっており、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

インボイス制度は2023年10月1日から導入される消費税の処理・納付に関わる新たな仕組みです。この制度は法人だけでなく、フリーランスや副業をしている人にも関わる重要な制度と言われています。しかし、インボイス制度の導入によって何が変わるのか?何をしないといけないのか?意外とわかっていない人も多いのではないでしょうか。

今回は、インボイス制度がフリーランスとして活動している人に与える影響について解説していきます。

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インボイス制度の前に知りたい消費税の仕組み

本題の前に消費税の仕組みと用語について知っておきましょう。消費税とは「商品・製品の販売やサービスの提供などに対して広く公平に課税される税」です。消費税は消費者が負担し、事業者が納付する仕組みになっています。そして、この消費税の納付税額は「課税売上にかかる消費税額から課税仕入れにかかる消費税額を差し引いて計算」されます。つまり、商売において売り手と買い手がいる場合は、買い手が税金を売り手に払い、その金額を売り手が国に対して支払うことになるのです。

仕入税額控除とは

仕入税額控除とは生産や流通の段階で支払いが行われる度に発生する消費税の二重課税を解消するための制度です。 例えば、A社・B社・C社という3つの会社での取引をしていたとしましょう。A社がB社に商品Xを100万円で発注したとき、B社はA社に対して10%の消費税10万円を上乗せし、税込110万円で請求書を発行します。一方、B社も商品Xを作るため、材料YをC社から60万円で購入しているとしましょう。C社はB社に対して10%消費税込みで66万円を請求します。そうすると、1つの商品Xに対して消費税が二回発生し、二重課税になってしまうのです。これを解消するのが仕入税額控除という仕組みです。この制度ではB社はAに支払われた消費税10万円とC社に支払った6万円の差分である4万円を納税することになっています。

免税事業者とは

原則として全ての事業者は消費税納税義務がありますが、一定の要件を満たす場合には消費税の支払いを免除でき、この免除を受けている事業のことを免税事業者と言います。実態としては、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者と判断される場合がほとんどです。また、前々事業年度の売上がない場合も該当するため、開業2年は消費税を支払わなくても良いと言われることが多いですが、一定条件を満たす場合は課税される場合があります。正確な情報は税務署に確認するようにしましょう。

課税事業者とは

課税事業者とは最終的に消費税を納める義務がある事業主のことを指します。個人の場合、課税事業者になる要件は大きく分けて以下の通りです。

  • 前々事業年度の課税売上金額が1,000万円を超える。
  • 前年の上半期の課税売上または人件費が1,000万円を超える。

上記の要件に該当し、課税事業者となった場合は「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出する必要があります。反対に事業年度が2年経過し、要件を満たさなくなった場合は消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書が必要です。

インボイス制度の概要

インボイス制度の導入の背景には「複数税率への対応」があります。日本の消費税は2019年10月の消費税増税に伴い、標準税率10%と軽減税率8%が混在するようになりました。それまでは一律だったため、税額は簡単に計算できましたが、混在することにより複雑になったのです。そこで、インボイス制度を導入し、正確な税額を確認できるように導入することになりました。この制度は登録を受けた課税事業者のみが法的効力のあるインボイスを発行できるという仕組みです。

インボイス制度とは

登録を受けた課税事業者のみが法的効力のあるインボイスを発行できるという新しい制度で、正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。記載義務を満たした請求書によって消費税を計算し、納税するという仕組みです。この記載義務を満たした請求書のことをインボイス(適格請求書)といい、インボイスでなければ仕入額控除が適用されなくなります。原則、売り手は買い手から求められた場合、インボイスを交付しなければなりません。一方で買い手は仕入額控除の適用を受けるために、売り手である登録事業者から交付を受けたインボイスが必要です。

適格請求書とは

インボイス制度が求める適格請求書とはどのようなものでしょうか。この適格請求書とは現在義務付けられている請求書(区分記載請求書)に対して「インボイス制度の登録番号」「適用税率」「消費税等の額」が追加された請求書を指します。具体的には以下の項目が記載された請求書です。

  1. 発行者の氏名または名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 受領者の氏名または名称
  5. 軽減税率の対象である旨の表記
  6. 適用税率ごとに区分した合計額
  7. インボイス制度の登録番号
  8. 適用税率
  9. 適用税率ごとの消費税額の合計

ただし、不特定多数に対して販売を行う小売や飲食店などは簡易請求書と呼ばれる別の様式でも可能とされています。事業内容に合わせて税務署に確認すると良いでしょう。

適格請求書の発行要件

適格請求書は「消費税の課税事業者」でなければ発行できません。この適格請求書発行事業主となるためには、税務署長に申請書を提出し、登録を受ける必要があります。しかし、この登録は課税事業主でなければ登録を受けることができないため、注意が必要です。

<適格請求書の発行要件>

  1. 適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。
  2. 適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に『適格請求書発行事業者の登録申請書』を提出し、登録を受ける必要があります。なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。

「適格請求書発行事業者」は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合であっても免税事業者にはならず、消費税及び地方消費税の申告義務が生じます。

2023年からインボイス制度によって変わること

では、2023年10月から具体的に何が変わるのでしょうか。まず、仕入税額控除の要件が変わってしまうことです。従来は誰でも仕入税額控除を適用することができていましたが、この制度により、インボイス(適格請求書)でなければ控除の対象ではなくなります。また、この適格請求書は免税事業者は原則発行できないので注意が必要です。

仕入税額控除の要件になる

これまでは特別な対応をしなくても、仕入税額控除は適用されていました。しかし、インボイス制度の導入に伴い、「課税事業者が発行したインボイス」のみが法的に有効となります。つまり、このインボイスでなければ仕入額控除を受けられなくなるということです。免税事業者はインボイスは原則発行できないため、免税事業者と取引し、支払いを請求された事業者は消費税を上乗せした請求に対して支払いをしても消費税の控除対象にならないのです。

消費税の計算方法

インボイス制度の前は消費税の端数計算は商品ごとに行っていました。しかしインボイス制度においては「1インボイスにつき、税率ごとに1回」というルールに変更になります。また、これまでは1年間の総売上に対する消費税を算出することで税額を決める「割戻し計算」のみ認められていました。しかし、インボイス制度によって都度売上で発生した消費税の金額を足していくことによって税額を算出する「積上げ計算」を採用することも可能になったのです。

インボイス制度がフリーランスにもたらす影響

では、具体的にインボイス制度の導入に伴い、フリーランスにどのような影響があるのでしょうか。基本的に売上1,000万円以下のフリーランスは免税事業者となります。そのため、インボイス制度で求められている適格請求書を発行することはできません。つまり、取引の相手方は、免税事業者が発行した請求書では仕入額控除を適用することができなくなります。相手方の事業者が「消費税が控除にならないので免税事業者に消費税分を支払いたくない」と考えると、以下のような影響が出てきてしまうと考えられます。

  • 免税事業者は相手方の事業者の立場を考えて、消費税を乗せた請求がしにくくなり、売上が減少する。
  • 相手方の事業者が控除されるように課税事業者に仕事を依頼するようになる。それに伴い、仕事が減少する。

インボイス制度に対してフリーランスが取るべき対応

インボイス制度に対してフリーランスが取るべき対応は2種類あります。1つ目はあえて課税事業者になり、適格請求書を発行できるようになることです。これは売上が1,000万円以下の免税事業者であっても自ら納税義務者になるという方法です。2つ目として、何もせず従来通りの免税事業者でいる方法もあります。どちらが良い・悪いかについては運用してみないとわからない部分もあるため、しばらくの間は経過処置という猶予期間も国は設定しています。

ケース1. 適格請求書発行事業者への登録

売上が1,000円以下の免税事業者であってもあえて課税事業者になり、適格請求書発行者になるという方法です。この場合、発行する適格請求書には法的効力があるため、取引の相手方である事業主は仕入額控除を受けることができます。なお、課税事業者になるためには「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。これは、免税事業者のままでは売上や仕事が減ってしまうリスクを避けるために納税義務を負うという方法です。

ケース2. 適格請求書発行事業者へ登録しない

取引の相手方や事業形態にもよるものの、適格請求書発行事業者へ登録はせず従来通り、免税事業者のままでいるという方法です。売上や仕事の減少リスクがあまりないのであれば、そのままにしておいても大きな影響はありません。また、経過処置として、インボイスに対応していない事業者からの仕入れについても2023年からの3年間は80%、2026年からの3年間は50%の仕入税額控除が認められています。そのため、事業規模や形態によっては今すぐ適格請求書発行事業者へ登録する必要はないのかもしれません。

まとめ

エンジニアファクトリーフリーランス

今回は巷でよく耳にするインボイス制度について解説しました。インボイス制度と適格請求書発行事業者の登録は消費税が始まって以来、大きな制度改正だと言われています。インボイス制度は課税事業者だけでなく、多くのフリーランスが該当する免税事業者にも関係があることはお分かりいただけたと思います。売上1,000万円以下のフリーランスの方は取引先の状況や意向を事前にヒアリングしておいた方が良いでしょう。今後、課税事業者になるのか、ならないのかも含めて適切に判断ができるように日頃から知識をつけるようにしておいてくださいね。