近年、フリーランスとして働くエンジニアが増加するなか、「経費にできる支出」と「経費にできない支出」の線引きについて悩む方も多いのではないでしょうか。特に、正しく経費を計上することで節税につながる一方で、誤った計上は税務調査での指摘やペナルティの原因となることもあります。
そこで本記事では、フリーランスエンジニアの経費について、具体例や注意点を交えながら解説します。適切な知識を身につけ、節税対策をしっかりと行えるようにしましょう。

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そもそも経費とは?
経費とは、事業を進めるうえで必要な支出のことです。フリーランスとして働く場合、この経費が税金の計算に大きく影響します。
具体的には、事業で得た収入から必要な経費を差し引いた「所得」に対して所得税が課されます。そのため、きちんと経費を把握して申告することで、所得を抑え、結果として納める税金を減らすことができます。
フリーランスにとって経費はなぜ重要?
フリーランスとして働く場合、経費の把握はとても大切です。それは、所得税は「収入から経費を引いた金額」に対して課税されるからです。もし経費を正しく計上できていなければ、確定申告がうまくいかず、結果として余分な税金を払うことになってしまうかもしれません。
また、多くのフリーランスは税理士に頼らず、自分で確定申告を行っています。そのため、普段から売上と経費をしっかり管理しておくことが、税金を適切に納めるための基本になります。各社から販売されているインターネット型の会計ソフトを使えば、僅かな時間で確定申告の準備をすることもできます。
経費にできるもの・できないものの基準
確定申告では、経費を売上から差し引くことで所得を減らし、税金を軽減できます。ただし、経費にできるのは「業務に必要な支出」に限られます。なんでも経費にできるわけではないので注意が必要です。
フリーランスの場合、経費にするかどうかを自分で判断する場面も多いと思います。まずは、「これは仕事のための支出か?」という基準を意識しましょう。これを基に判断するだけで、大半のケースに対応できるはずです。
また、家賃や光熱費のようにプライベートと仕事の両方で使う支出は、「事業で使った分」だけを経費として計上する必要があります。このような場合は、使用割合を算出して、適切に申告することがポイントです。
フリーランスエンジニアの経費として落とせるもの
フリーランスエンジニアが経費として落とせるものの代表的な項目について確認していきましょう。また、家賃と光熱費については事業に使った分のみを計上する必要があるので注意が必要です。
項目 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
旅費交通費 | 業務のために使った交通費や宿泊費 | 出張以外の旅行費や私的利用分は計上不可 |
通信費 | インターネットや電話代、レンタルサーバーやドメイン利用料など | 業務利用分とプライベート利用分を按分 |
広告宣伝費 | 名刺、展示会参加費用、自分をアピールするためにかかった費用 | 過剰な宣伝活動や業務無関係の支出は対象外 |
接待交際費 | 取引先との食事や接待 | 私的な飲食代や友人との会食は計上不可 |
消耗品費 | プリンターのインク代や事務用品など10万円未満のもの | 10万円を超えるものは減価償却費に分類 |
減価償却費 | パソコンや車など10万円以上のもの | 減価償却費の計算方法に注意(耐用年数に基づく分割計上) |
新聞図書 | 業務に必要とする書籍や雑誌、新聞など | 自宅用の新聞購読料や業務無関係の書籍は対象外 |
給料賃金・外注費 | 業務に関連する従業員や外注先への支払い | 家族や親族に支払う場合は実際の業務内容が重要 |
租税公課 | 個人事業税や固定資産税、自動車税など | 所得税や住民税は対象外 |
地代家賃と光熱費 | 電気代、水道代、ガス代 | 事業利用分のみ按分して計上 |
家賃や光熱費を経費計上する方法
フリーランスエンジニアの場合、自宅の一部を仕事場として使っているケースもあるのではないでしょうか。家賃や光熱費のように事業とプライベートの両方で使っている支出は「家事関連費」と呼ばれ、一部を経費として計上することが可能です。
プライベートと事業で使用している分を分ける按分を「家事按分」といい、事業で使用したと明確に主張できる比率を経費として計上することが可能です。ただし、この計上は青色申告の場合に限られる点に注意が必要です。
賃貸の場合
賃貸物件で家賃や光熱費を経費にする場合、「使用している面積」や「業務にかけた時間」の割合を基準に按分を行います。
面積で按分する場合
事業に使用している面積の割合を家賃にかけて算出します。
(例)家賃15万円の50平米のマンションで、そのうち10平米を仕事場として使用している場合:
10平米 ÷ 50平米 × 15万円 = 3万円
この3万円を経費として計上できます。
使用している時間で按分する場合
家賃15万円の50平米のマンションで、そのうち10平米を仕事場として使用している場合:
10平米 ÷ 50平米 × 15万円 = 3万円
この3万円を経費として計上できます。
持ち家の場合
持ち家の場合は、減価償却費、固定資産税、管理費、住宅ローンの金利分などです。自宅を所有していることで発生する費用は使用割合をかけて経費として算出できます。
ただし、住宅ローン控除を受けている場合は注意が必要です。事業の使用割合を50%以上に設定してしまうと控除が受けられなくなります。経費とするのか控除とするのかは事前に確認をしてから費用計上するようにしましょう。
その他、水道・ガス・電気などの光熱費についても事業用として認められる分のみ経費として計上することが可能です。
条件付で経費計上できるもの
その他、条件付であれば費用計上できるものについてご紹介します。事業との関連性を考え、経費として計上できるか考えてみるようにしてください。
衣装代・美容代
基本的に衣装代や美容代は、個人の生活に必要な支出とみなされ、経費として認められることは少ないです。ただし、業務上必要な衣装や美容に関する支出で、かつ特別に購入したものであることを証明できれば経費として計上できる可能性があります。
- セミナー登壇時に必要なスーツ
- 撮影やPR活動のための特殊な衣装
フリーランスエンジニアとしてのみ活動している場合は、該当するケースが少ないため、慎重に判断してください。
冠婚葬祭の交際費
事業に関連する企業や団体の冠婚葬祭に出席する際の支出(祝儀や香典など)は、交際費として計上可能です。ただし、プライベートな交際が含まれないことが前提となります。
例:
- 取引先の結婚式に招待された際の祝儀
- 業務上の付き合いがある方の葬儀に参列した際の香典
駐車場代
業務のために車を使用する場合、その駐車場代は経費として認められます。
例:
- クライアント先への訪問時に利用した駐車場代
- 業務用の車両を保管するための駐車場代
プライベートでの使用が含まれる場合は按分して計上する必要があります。例えば、業務とプライベート両方で使う車の場合、業務で使った割合を算出してその分だけを経費として申告します。
フリーランスエンジニアが経費として落とせないもの
経費にならないものの基本的なルールは「事業に直接関係がない支出」であることです。具体的な例を以下にまとめました。
プライベートで使った費用
家族や友人との飲食代は経費として計上することはできません。また、保育料も対象外となっているので注意が必要です。
家族や友人との飲食代は、事業に関連しない個人的な支出とみなされるため、経費にはできません。同様に、保育料などの家庭内の支出も経費の対象外です。
例:
- 家族との外食代
- プライベートなイベント参加費
健康診断の費用
健康診断の費用は、事業用経費にも医療控除の対象にもならないため、どちらにも計上できません。また、家族分の健康診断費用も同様に対象外です。
例:
- 定期健康診断の費用
- 予防接種代
国民健康保険や国民年金の掛け金
これらは個人にかかる支出とみなされるため、経費には計上できません。ただし、社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
例:
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
フリーランスエンジニアの経費の取り扱いにおける注意点

フリーランスとして活動する以上、経費の取り扱いと管理は避けて通れません。以下に、正しく経費を扱い、税務トラブルを防ぐためのポイントを解説します。
レシートや領収書の保管
経費として何かを購入した場合、領収書やレシートが経費計上の証拠となります。青色申告の場合は7年間、白色申告の場合は5年間の保管義務があります。確定申告時に提出を求められることはありませんが、税務調査が入った際に提示を求められる可能性がありますので、日頃から整理し、紛失しないように注意しましょう。
帳簿への記帳
事業収入や経費は、正確に帳簿へ記載することが法律で義務付けられています。収益の記載は必須で、漏れがあった場合には過少申告としてペナルティが科される可能性があります。
経費の記載自体には義務はありませんが、記載しないと課税対象額が増えてしまうため、自分が損をすることになります。経費として計上できるものは正確に記載し、税負担を軽減しましょう。
過少申告が発覚した場合、税務調査や申告内容の修正を余儀なくされることで、余計な時間や手間がかかり、事業運営にも悪影響を及ぼす可能性があります。確定申告や記帳の際は、正確さを心がけましょう。
経費率の割合には注意
経費率とは、売上に対する経費の割合を指します。フリーランスエンジニアとして節税を意識するあまり、過剰に経費を計上しようとするケースも見られますが、経費が売上に対して過剰に多い場合、税務署から不自然だと判断されることがあります。特に、同業他社や同じ業種の平均と比べて極端に経費率が高い場合、税務調査の対象となるリスクが高まるでしょう。
事業の性質や活動内容によって経費率は異なりますが、明らかに業務に関係のない支出を経費に含めると、税務署から不正の疑いを持たれる可能性があります。そのため、経費は実際の事業に関連した範囲で計上し、必要以上に経費率を高くしないようにすることが重要です。
まとめ
今回はフリーランスエンジニアの経費について解説しました。経費として計上できるかどうか迷ったときは、まず「それが事業に関連した支出かどうか」を確認することが基本です。エンジニアとしてのスキルや業務に注力する一方で、経費や売上の管理、正確な計算も重要な仕事の一環といえます。
経費の証拠となる領収書やレシート、売上管理ができる請求書やクレジットカードの利用履歴などは、日頃からしっかりと整理し、保管することを心がけましょう。また、節税を正しく行うためにも、税金に関する基本的な知識を少しずつ身につけていくことが大切です。
効率的で安心な経費管理を実現するために、この記事を参考にして、できるところから始めてみましょう。
フリーランスエンジニアにとって、経費の取り扱いをマスターすることは、税金支払い後に手元にお金を残すことに繋がります。また開発技術の向上のための書籍やセミナーなどは経費となるため、上手に活用して更なる売上増加に繋げましょう。セミナーに登壇する機会のある場合は、スーツや散髪、眼鏡なども経費の対象です。日々の管理が面倒だからと経費管理をしていない人もいますが、インターネット型の会計ソフトを活用すると、著しく時間を短縮することもできます。ぜひ活用しましょう。
工藤 崇
FP-MYS代表取締役社長CEO。
相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発。上場企業を中心に多数の執筆のほか、IFAとして東京都内で実施されているマネースクールのメイン講師を務める。また早期相続のコンサルティングに代表される個人相談とFP関連の開発事業を中心に展開。
最新ポートフォリオ:https://www.foriio.com/takashi-kudo